日々思うこと①

子どもを産むことは望めば誰しもができることと思いがちですが、必ずしも子どもを授かるとは限りません。不妊治療の成功率も高くはないです。「随分昔のことだけど…不妊治療の末に妹からの卵子の提供を受けて体外受精をする選択肢もあったが、自然ではないことのように思われて、ほしかったけれど選択しなかった」と、最近ある女性が話してくれました。きっと養子縁組という選択肢はなかったのでしょう。話を聞いていて、当時の切実な気持ちが伝わってくるようでした。

子どものあるなしには、人それぞれの事情があることです。子どもは当たり前にできるものではありません。「子どもは授かりもの」といわれる由縁です。

母性神話

母親は生まれながらにして母性本能があるので、自分のことよりも赤ちゃんを優先するという「母性神話」が日本ではまだ根強く残っていますが、子どもが生まれたからといって、すぐに親になれるわけではないと思います。子どもを育て始めて、親になっていくのでしょう。子どもは日々成長していきますが、親も日々成長します。現代は父親の育児も欠かせません。家族内で協力し合って、子どもを育てていくことがたいせつです。

いちばん大事なこと

親としていちばんに大事なことは赤ちゃんの気持ち(欲求)を汲み取ることです。そこからすべてが始まります。例えば赤ちゃんが泣けば、おなかがへっているのかな?おむつが気持ち悪いのかな?眠たいのかな?抱っこしてほしいのかな?寒いのかな?暑いのかな?熱があるのかな?痛いのかな?かゆいのかな?等々…

 

答えを教えてくれる教科書もない中で、泣いている赤ちゃんを前に、あれかこれかと赤ちゃんの欲求を汲み取っていくしかありません。

赤ちゃんの仕事?

「赤ちゃんは泣くのが仕事」と言われますが、泣くことそのものが仕事だと言っているわけではありません。赤ちゃんは言葉が話せないので、泣くことで周囲の人に自分の欲求や不快感を知らせています。赤ちゃんにとって泣くことは、重要なことを伝える手段であることを指している言葉です。

三歳児神話

三歳までは母親が家庭で育てた方がよいと言われ続けている「三歳児神話」があります。

現代では、三歳までは母親が仕事も持たずに家にいて子どもを育てることに専念した方がよいということにはなりません。しかし、何故「三歳までは」といわれるのでしょうか?

 

生れてまもなくから愛着形成が始まり、三歳までの子育てが、子どもの愛着形成にとって大事であることは否めないからです。赤ちゃんや子どもが特定の人(主に親・養育者)との間に、安定した信頼関係を築く重要な時期だからです。

基本的信頼

特に二歳頃までに形成される「基本的信頼」といわれる「自分は受け入れられ、愛されている。自分のいる所が安全で安心できるところであるという感覚」は、生きていく基礎となります。ありのままの自分を受け入れ、自分を信頼し、自分を尊重できる「自己肯定感」が育ちます。「自己肯定感」があると、逆に他者に対しても同じことが言えます。

自己肯定感があると、安定した気持ちで過ごせること、ストレスに強いこと、根拠はないけど人と比べることなく自分は自分であると自信を持ち、困難にぶつかった時も人生を主体的に選択して生きられます。おとなになってからも自己肯定感は高められますし、低いなら低いなりにどうにかなるものではありますが、土台の部分で自己肯定感があるのとないのとでは雲泥の差があり、人生が違ってくるのではないのでしょうか。

いちばん大事な選択

親や養育者は特に初めての子育てに、戸惑いながらも赤ちゃんや子どもの欲求、不快感、気持ちを汲み取って育てていきます。親や養育者には理想の子育てがあるのかもしれませんが、理想の子育てよりも、日々の生活では子どもの様子を見ながら、臨機応変に育てていく方が良いと思います。

子どもが生まれてから、どのような生活様式を選択するのかはそれぞれの夫婦によって、家庭によっていろいろだと思います。例えば仕事を持って働き続けるとしたら、周りの協力を得られるかどうかによっても状況は違ってきます。また赤ちゃんや子どもが長い時間過ごす保育園や幼稚園も環境のよいところを選ぶことがたいせつです。

ただ親や養育者が時間や心に余裕がないのは避けねばなりません。イライラしてしまう、不機嫌になってしまうなど自分をコントロールできないのでは、子どもが子育てしているようなものです。時間や心の余裕のなさは、弱い方へ弱い方へと悪影響が及びます。かわいい赤ちゃんや子どもにそれが伝わります。心に余裕がなくなった時には、ライフサイクルの見直しが必須です。なにがいちばん大事かは言うまでもないことです。親や養育者がいちばんに守らなくてはならないのは赤ちゃんや子どもです。

感謝

子どもは生れる前の授かるか授からないかの段階から、親や養育者の思うようにならない存在のようです。授かったことはあたり前ではなく、感謝です。子どもは親や養育者の思い通りには育ちませんが、育てたように育ちます。

 

無責任さによって起こる事件のニュースを聞くたびに思うのですが、子どもが大人になった時、自らの子育てが社会に及ぼす影響がとても大きなことであると認識する必要があるのではないでしょうか。